ウエストナイル熱(脳炎)ってどんな病気?


 ウエストナイル熱(脳炎)は、ウエストナイルウイルスによっておこる疾病です。このウイルスは1937年に初めて、ウガンダのWest Nile地方で発熱した女性から分離されました。鳥と蚊の間で感染環が維持され、主に蚊を介してヒトに感染し、発熱や脳炎を引き起こします。媒介蚊は主にイエカの仲間でありますが、我が国では、日本脳炎のベクターであるコガタアカイエカやヤマトヤブカなどもなり得ると考えらています。
 現在のところ日本では感染例は認められていませんが、近年まで報告のなかったヨーロッパやアメリカなど西半球に1990年代中頃から流行が発生しており、北米の流行では従来と異なり、感染鳥の発病や死亡率、ウマとヒトにおける流行、重篤な脳炎患者の発生が顕著であり、本ウイルスが本邦に侵入すると、蚊や鳥を介して広範囲に拡がる可能性がありますので、新興感染症・輸入感染症として注意が必要です。

1.臨床症状

 ヒトにおける潜伏期間は3〜15日です。感染例の約80%は不顕性感染に終わります。発症した場合多くは急性熱性疾患であり、短期間(約1週間)に回復します。一般的に、3〜6日間程度の発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振などがみられます。皮膚発疹が約半数で認められ、リンパ節腫脹を合併します。時にデング熱と似た熱型を取ります。さらに重篤な症状として、頭痛、高熱および方向感覚の欠如、麻痺、昏睡、震え、痙攣などの髄膜炎・脳炎症状が挙げられますが、重篤な症状を示すのは感染者の約1%といわれています。これらは主に高齢者にみられ、致命率は重症患者の3〜15%とされています。アメリカ合衆国の患者のデータでは、筋力低下を伴う脳炎が40%、脳炎が27%、無菌性髄膜炎が24%にみられています。

2.病原体

 フラビウイルス科フラビウイルス属に属し、日本脳炎ウイルスやセントルイス脳炎ウイルスに近いウイルスです。鳥類(野生と飼育の両方)に感染しますが、発病したり、死んだという報告は過去にはあまりみられておりません。哺乳類に対しても時に感染し、ウマ科では脳炎をおこすこともあります。ヒトでも発病します。

3.治療と予防

 一般に、臨床症状を呈したヒト、ウマなど動物における本症に対する治療法はありません。実験感染動物(マウス)においてゲンタマイシン、メラトニン、ステロイドなどによって回復例が報告されています。一般的には対症療法を行います。ワクチンは未だ開発段階でありますが、動物実験モデルで日本脳炎ワクチンにより感染を防御する可能性を示唆する報告があります。日本のように未だ発生のない地域においては、初期の段階でウイルス検査を迅速に実施することが、感染の広がりを最小限に抑えることにつながります。鳥類の感染の把握、特にカラスの死亡などはウイルスの活動動向を知る上で最高の指標となります。あるいは、蚊のコントロールおよび動向の把握と公衆衛生教育、確定診断を行うための検査法の確立と普及も重要となります。発生地域においては、個人的に蚊との接触を防ぐことが重要であります。また、海外渡航者で発熱・精神症状が認められウイルス性脳炎が疑われる患者、あるいは髄液細胞増多、発熱を伴ったギランバレー症候群、非細菌性髄膜炎、あるいは急性弛緩性の麻痺を呈した患者に対しては、本症の可能性を考慮する必要があります。

4.世界の状況

 アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアなど広い地域に分布しています。最近のウエストナイル脳炎の流行は、アルジェリア(1994)、ルーマニア(1996〜1997)、チェコスロバキア(1997)、コンゴ共和国(1998)、ロシア(1999)、アメリカ(1999〜2001)、イスラエル(2000)などで発生しています。2001 年末までに、北米では149例のウエストナイル脳炎患者が発症し、死亡者は18 人認められています。CDCによれば、北米のウエストナイルウイルスは東海岸から中部諸州に拡大し、カリブ海諸国にも拡がっています。ウマでの流行はモロッコ(1996)、イタリア(1998)、アメリカ(1999 〜2001)、フランス(2000)などで発生しています。

5.感染症法上の取り扱い

 ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)は、従来は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づき、定点把握対象四類感染症の「急性脳炎」として取り扱われてきましたが、平成14年11月1日付けで「全数届出対象四類感染症」の一つとして施行されることとなりました 。

 届出基準 届出様式(pdfファイル)


引用(参考)文献

IDWR,4(27),2002:国立感染症研究所感染症情報センター

感染症情報センタートピックス:国立感染症研究所感染症情報センター

医師からの都道府県知事等への届出のための基準  

・感染症予防必携,財団法人日本公衆衛生協会


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