2001年感染症発生動向調査情報   概要版PDFファイル

1 全数報告対象感染症
 全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者報告数は、1類感染症は0人、2類感染症はコレラ2人、細菌性赤痢20人、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症は
80人、4類感染症はアメーバー赤痢4人、急性ウイルス性肝炎2人、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1人、後天性免疫不全症候群10人、ツツガムシ病3人、デング熱1人、梅毒3人、マラリア2人であった。2000年に比べ増加が目立ったのは細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症であった。特に、細菌性赤痢は11月末から12月中旬(第48〜50週)にかけて、山口県の2社で加工された韓国産の生カキを原因食品とした食中毒に関する事例で11人と多発した。

2 定点報告対象感染症
 週報告対象の4類感染症の患者報告数は49,742人で、2000年(58,950人)に比べ15.6%減少した。この要因の一つとしてインフルエンザの流行が小規模であったことが挙げられる。また、定点当たりの月間患者報告数(年間患者報告数÷12月÷定点数)が最も多かったのは感染性胃腸炎(37.60人)で、流行性耳下腺炎(8.65人)、水痘(8.40人)、インフルエンザ(7.93人)がこれに続いた。
 月報告対象の4類感染症の患者報告数は1,211人で、2000年(1,364人)に比べ11.2%減少した。このうち、STD定点報告の性感染症は603人で、2000年(606人)とほぼ同じであり、男性では淋菌感染症(155人)、性器クラミジア感染症(134人)、女性では性器クラミジア感染症(177人)が多かった。基幹定点報告の薬剤耐性菌感染症は608人で、2000年(758人)に比べ19.8%減少した。特に、患者報告数の多いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は2000年751人から2001年588人へと21.7%減少した。

2001年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1)インフルエンザ
 患者報告数は6,949人で、前年比0.39と小規模であった。2000/2001シーズンは流行の開始時期が遅く、第5週に定点当たり報告数が1.0人を超え、第11〜12週に定点当たり15.6〜15.8人(昨シーズンの1/4)でピークに達し、4月下旬に終息したが、患者発生は初夏までみられた。年齢別では3〜5歳の幼児を中心に、14歳以下の若年層が全体の3/4を占めた。保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、伊勢、熊野保健所管内の順に多く、県下全域で流行が認められた。なお、2001/2002シーズンについては11月から散発し始め、12月中旬からわずかに増加する傾向を示した。

(2)咽頭結膜熱
 患者報告数は655人で、前年比2.15と増加した。過去10年では1991年に次ぐ流行規模となり、全国では過去10年で最大の規模となった。2001年の流行はこれまでの様相と異なる二峰性を示し、2〜3月にかけて第10週の定点当たり0.7人をピークとする流行(主に上野、鈴鹿保健所管内)がみられた後、7〜9月にかけて第31〜32週の定点当たり1.0人をピークとする流行がみられた。年齢別では1〜5歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、上野、鈴鹿保健所管内の順に多かった。

(3)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 患者報告数は2,016人で前年比0.89であった。2000年は例年に比べて大きな流行であったが、2001年1〜6月にかけても第3〜4週の定点当たり1.8〜1.9人、第21〜22週の定点当たり1.6人の2回をピークとする大きな流行がみられた。その後、9月にかけて一旦終息したが10月以降再び増加に転じ、12月には定点当たり1.0人を超えた。引き続き2002年初夏にかけての流行が懸念される。年齢別では5歳児を中心に3〜7歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、上野、鈴鹿保健所管内の順に多かった。

(4)感染性胃腸炎
 患者報告数は20,304人で前年比0.96であった。例年1〜3月頃をピークに初夏までみられる流行は2000年の定点当たり報告数(ピーク:第11週21.6人)をやや下回ったが、1〜2月にかけての定点当たり報告数(ピーク:第4週15.6人、第8週16.3人)は過去10年で最大規模であった。また、例年11〜12月にかけてみられる流行(ピーク:第51週23.3人)は2000年(ピーク:第51週21.6人)を上回り、過去10年で最大の1999年に次ぐ規模となった。年齢別では、1〜10月は1歳児に多く、11〜12月は3〜4歳児に多かった。保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、鈴鹿、伊勢保健所管内の順に多かった。

(5)水痘
 患者報告数は4,537人で、前年比0.93であった。2000年の流行は例年に比べて大きく、2001年に入っても定点当たり3.0人を超える週があるなど、6月までは例年に比べてやや大きい状態が続いていたが、その後は例年並みの流行となった。年齢別では1〜4歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は鈴鹿、上野、伊勢保健所管内の順に多かった。

(6)手足口病
 患者報告数は3,123人で、前年比0.83と減少した。2000年の流行は二峰性で、夏季の流行が一旦終息に向かった後、秋季にも小流行がみられたが、2001年は流行形態、規模とも例年並みで、ピークは第29週の定点当たり6.1人と、2000年とほぼ同程度の流行であった。年齢別では1〜5歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は鈴鹿、上野保健所管内の順に多かった。

(7)伝染性紅斑
 患者報告数は1,665人で、前年比7.3と大幅に増加した。2001年は第25〜26週の定点当たり1.4人をピークとする大きな流行がみられ、1997年に次ぐ規模となった。例年、夏季以降の報告数は少なくなるが、秋季にも定点当たり0.5人前後の多い状態で推移し、第45週以降再び増加に転じた。この冬季の流行は夏季にほとんど流行がみられなかった尾鷲、松阪保健所管内でもみられた。また、本疾患は5年周期で流行がみられており、2002年は前回流行の大きかった1997年から5年目にあたるため、夏季にかけての患者発生が懸念される。年齢別では4〜6歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、鈴鹿保健所管内の順に多かった。

(8)ヘルパンギーナ
 患者報告数は2,508人で、前年比1.22と増加した。過去10年では1999年、1993年に次ぐ流行規模となった。5月下旬から患者報告数が急増し、流行のピークは第26〜29週の定点当たり7.1〜7.4人であった。年齢別では1〜2歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は鈴鹿、桑名保健所管内の順に多かった。

(9)麻疹
 患者報告数は169人で、前年比0.70と減少した。全国的には九州地方や北海道を中心に第21週をピークとする大きな流行がみられたが、三重県では3〜4月にかけて報告数が増加し(ピーク:第12週の定点当たり0.4人)、上野保健所管内の一中学校で施設内流行がみられたが、その後は散発的な発生であった。年齢別では10〜14歳及び1歳に多く、保健所管内別定点当たり報告数は上野、四日市保健所管内の順に多かった。なお、成人麻疹の患者報告数は4人で、2000年と同数であった。

(10)流行性耳下腺炎
 患者報告数は4,673人で、前年比1.64と増加した。2000年秋季以降報告数が増加し、2001年に入ると第22週の定点当たり3.3人をピークに例年より大きな流行がみられた。その後秋季にかけて減少に転じたものの、定点当たり1〜2人の多い状態で推移した。全国的には年間を通じて過去10年間で最大の流行となった。年齢別では4〜5歳児を中心に3〜7歳児に多く、保健所管内別定点当たり報告数は尾鷲、伊勢保健所管内の順に多かった。

(11)流行性角結膜炎
 患者報告数は271人で、前年比0.72と減少した。2000年は伊勢保健所管内のほか、尾鷲、熊野保健所管内で多発し、過去10年間で最大の流行となったが、2001年は伊勢保健所管内を除いて散発的な発生となった。伊勢保健所管内では1997年以降一定して定点当たり50人/年以上の患者報告があり、他保健所管内に比べて目立って多くなっている。同保健所管内の2001年夏季の発生は例年に比べて少なかったが、逆に例年発生の少ない12月(特に第50週以降)に多発した。年齢別では、2000年は20〜39歳に次いで60〜79歳にも多くみられたが、2001年は20〜39歳が中心であった。

(12)マイコプラズマ肺炎
 患者報告数は52人で、前年比1.53と増加した。全国では年当初から過去2年に比べて定点当たり報告数の多い状態がみられ、7月以降増加傾向が顕著となった。三重県では伊勢保健所管内で年間を通じて患者報告があり、同管内での報告数は2000年に比べて倍増したが、他保健所管内での報告数はわずかであった。年齢別では5〜9歳児に多かった。

(13)性器ヘルペスウイルス感染症
 患者報告数は88人(男60人、女28人)で、2000年に比べて女性は9人減少したが、男性は17人増加した。性別では、全国では女性に多い傾向であるのに対し、三重県では男性に多い傾向がみられている。年齢別では30〜34歳を中心に15〜44歳が73.9%を占め、2000年は45歳以上で40%を占めていたのに対し2001年は25%に減少した。保健所管内別定点当たり報告数は上野、尾鷲、四日市保健所管内の順に多かった。

(14)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
 患者報告数は588人で、前年比0.78と減少した。年齢別では2000年と同様に乳幼児と高齢者に多い傾向がみられたが、60歳以上の報告数は2000年に比べて25.6%減少した。保健所管内別定点当たり報告数は松阪保健所管内で特に多かった。