2003年三重県感染症発生動向調査情報

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 全数把握対象感染症
 
全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者届出数は、2類感染症の細菌性赤痢3人、腸チフス2人、パラチフス1人、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症20人、4類感染症のA型肝炎1人、つつが虫病4人、マラリア1人、5類感染症のアメーバー赤痢3人、急性ウイルス性肝炎(旧分類)1人(A型)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3人、後天性免疫不全症候群8人、梅毒5人であった。

 定点把握対象感染症
 
5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ、小児科、眼科及び基幹定点からの患者届出数の合計は54,419人で、2002年(50,258人)に比べ8.3%増加した。定点当たり年間患者届出数(年間患者届出数÷定点数)は、感染性胃腸炎(459.8人)、インフルエンザ(229.2人)、水痘(85.1人)、ヘルパンギーナ(78.0人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(60.8人)の順に多かった。昨年大きな流行がみられた伝染性紅斑、流行性耳下腺炎、流行性角結膜炎、無菌性髄膜炎は少なく、咽頭結膜熱、マイコプラズマ肺炎の増加が目立った。 また、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、RSウイルス性細気管支炎については、三重県独自の取り組みとして2003年第1週から小児科定点把握対象感染症に追加し、調査を開始したところであるが、このうちRSウイルス性細気管支炎については、感染症法の一部改正(2003年11月5日施行)によりRSウイルス感染症として小児科定点把握対象感染症に追加されたことにより、第45週から全国一律の基準による集計に移行した。

2003年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりです。

(1)インフルエンザ
 定点当たり年間患者届出数は229.2人で、前年比1.25倍に増加した。定点・週当たり患者届出数が1人を超えたのは2002年第51週(1.7人)で、2003年第4週(47.2人)にピークに達した。その後、第14週に1人を下回り終息した。年齢別では、2002年は7歳を中心とした学童の占める割合が高かったのに対して、2003年は4歳を中心とした乳幼児の占める割合が高かった。保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、上野保健所管内の順に多かった。

(2)咽頭結膜熱
 定点当たり年間患者届出数は22.8人で、前年比5.85倍と大幅に増加した。流行の立ち上がりは例年に比べて約1か月早く、第24週に定点・週当たり患者届出数が1人を超え、第29週に同1.4人とピークに達し、流行規模は感染症発生動向調査開始以降では最も大きな規模となった。年齢別では3〜4歳が多く、保健所管内別では桑名、上野保健所管内で多かった。

(3)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 
定点当たり年間患者届出数は60.8人で、前年比1.11倍に増加した。例年のように2003年当初から6月にかけて流行がみられ、第9週、第24週に定点・週当たり患者届出数が2.0人とピークに達した。その後一旦減少し、秋季以降増加に転じ、第48週に定点・週当たり患者届出数が1.8人と平年並みのピークがみられた。年齢別では5歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿保健所管内で多かった。

(4)感染性胃腸炎
 
定点当たり年間患者届出数は459.8人で週届出対象の5類感染症の中で最も多かったが、前年比1.06倍であった。流行のピークは、上半期は第11週(定点・週当たり患者届出数16.9人)と昨シーズンより3週程度遅く、下半期は第51〜52週(同15.2〜15.3人)であった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢、熊野保健所管内の順に多かった。

(5)水 痘
 定点当たり年間患者届出数は85.1人で前年比0.87倍に減少した。流行のピークは第2週で定点・週当たり患者届出数は4.0人であった。第3週以降は定点・週当たり患者届出数が2人前後で推移し、第39週に最少(同0.31人)となった後増加に転じ、第52週の同3.8人まで増加した。年齢別では1〜5歳が多く、保健所管内別では鈴鹿、伊勢保健所管内で多かった。

(6)手足口病
 
定点当たり年間患者届出数は33.0人で前年比1.79倍に増加したが、昨年に続いて小規模な流行であった。定点・週当たり患者届出数が1人を超えたのは第21週で、その後は横ばいで推移し、流行のピークは第27週で同2.6人であった。全国的には感染症発生動向調査開始以降では2000年に次ぐ規模となった。年齢別では1〜2歳が多く、保健所管内別では尾鷲、桑名保健所管内で多かった。
 
(7)ヘルパンギーナ
 
定点当たり年間患者届出数は78.0人で、前年比1.38倍に増加した。第22週に定点・週当たり患者届出数が1人を超えると第25週以降急増し、第27週に同11.0人とピークに達した。感染症発生動向調査開始以降では1999年に次いで大きな規模となった。年齢別では1〜4歳が多く、保健所管内別では鈴鹿保健所管内で多かった。

(8)マイコプラズマ肺炎
 
基幹定点当たり年間患者届出数は9.9人で、前年比8.09倍に増加し、小児科定点当たり年間患者報告数は11.1人であった。基幹定点では、第20週に定点・週当たり患者届出数が1人を超えて同1.1人とピークに達し、感染症発生動向調査開始以降では最も大きな規模となった。年齢別では1〜9歳が多く、保健所管内別では熊野、上野保健所管内で多かった。小児科定点では、4月以降増加傾向がみられ、第17週に定点・週当たり患者報告数0.4人のピークがみられた後も増減を繰り返しつつ一定の流行が続き、第42、50週には同0.6人のピークがみられた。年齢別では4〜7歳が多く、保健所管内別では松阪、桑名保健所管内で多かった。

(9)性感染症
 
男性では淋菌感染症が定点当たり年間患者届出数9.7人で最も多かったが、前年比0.77倍に減少し、次に多かったのは性器クラミジア感染症で定点当たり年間患者届出数7.1人、前年比0.88倍に減少した。年齢階級別ではいずれも20〜29歳が多く、保健所管内別では桑名、四日市保健所管内が目立った。女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数10.8人と最も多く、前年比1.04倍であった。年齢階級別では昨年に比べ15〜19歳、25〜29歳の割合が増え、15〜29歳で全体の75%を占めた。次に多かったのは性器ヘルペスウイルス感染症で定点当たり年間患者届出数3.1人、前年比1.21倍に増加した。以前は男性優位であったが、女性が2002年以降増加に転じ、2003年はほぼ同数となった。年齢層は幅広く、保健所管内別では鈴鹿、津、四日市保健所管内で多かった。

(10)薬剤耐性菌感染症
 
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は52.7人で、前年比0.82倍、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0.4人で、前年比0.25倍、薬剤耐性緑膿菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0人(前年届出数16人)といずれも減少した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症については70歳以上が59.5%を占め、年齢が高くなるにつれて多発する傾向がみられた。