2004年三重県感染症発生動向調査情報


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 全数把握対象感染症

1)感染症法に基づく全数把握

 全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者届出数は、2類感染症(コレラ、細菌性赤痢等)は10人(2003年6人)、3類感染症(腸管出血性大腸菌感染症)は77人(2003年20人)、4類感染症(A型肝炎、つつが虫病等)は6人(2003年6人)、5類感染症(クロイツフェルト・ヤコブ病、後天性免疫不全症候群等)は32人(2003年20人)であった。
 現行の感染症法が施行された1999年4月以降の状況と比較すると、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症は過去最多の2001年(年間患者数80人)に次ぐ届出数で、4類感染症のつつが虫病(鈴鹿、津保健所管内各1人、松阪保健所管内2人)は2001年、2003年と同数であった。5類感染症では、クロイツフェルト・ヤコブ病(男3人、女2人でいずれも孤発性)及び梅毒(男7人、女3人)は最多で、後天性免疫不全症候群(男6人:日本国籍、女2人:タイ国籍)は1999年、2003年と同数、バンコマイシン耐性腸球菌感染症(vanC型)は初の届出であった。また、急性脳炎(男60歳代、70歳代各1人、ともに病原体不明)は2003年11月の5類全数届出対象感染症への指定後初の届出であった。

2)三重県独自の取り組みによる全数把握

 麻しん(成人麻しんを含む。以下同じ。)及び風しんの患者発生動向は、感染症法に基づく5類感染症として、小児科定点(45機関)及び基幹定点(9機関)からの週毎の届出により把握しているが、近年の麻しん及び風しんワクチンの接種率向上を背景として患者発生数が減少し、加えて定点医療機関のない市町村も少なからずあることから、地域の動向が必ずしも正確に把握されていない。
 このため、地域の患者発生状況を詳細に把握し、その状況を地域の関係機関に提供・公開することにより、ワクチン接種率を一層向上させ、麻しん及び風しんの発生予防とまん延防止を推進することを目的として、2004年9月28日から「麻しん・風しん患者全数把握調査」を開始した。
 同日から2004年末までの患者報告数は、麻しんは0人、風しんは2人(4歳女児、29歳女性)で、4歳女児(ワクチン接種済み)は症状所見により、29歳女性(ワクチン接種歴不明)は症状所見と特異的IgM、IgG抗体測定により診断された。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(73機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は51,416人で、2003年(54,942人)に比べ6.4%減少した。
 定点当たり年間患者届出数(年間患者届出数÷定点数)は、感染性胃腸炎(471.9人)、インフルエンザ(185.3人)、水痘(82.3人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(74.7人)、ヘルパンギーナ(53.2人)の順に多かった。
 2003年に比べ増加した感染症は、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、流行性耳下腺炎、RSウイルス感染症、流行性角結膜炎等であった。
 また、三重県独自の取り組みとして2003年第1週から小児科定点把握対象感染症に追加し、調査を行っているマイコプラズマ肺炎及びクラミジア肺炎は、2003年に比べいずれも減少した。
 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性307人、女性158人で、2003年(男性315人、女性234人)に比べ男性は2.5%、女性は32.5%減少した。また、基幹定点からの患者届出数は497人で、2003年(478人)に比べ4.0%増加した。

2004年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は次のとおりである。

(1)インフルエンザ

 定点当たり年間患者届出数は185.3人で、前年比0.81倍に減少した。定点・週当たり患者届出数が流行のめやすとされる1人を超えたのは2004年第1週(1.2人)で、2004年第5週にピーク(46.1人)に達した。その後、第12週に1人を下回り終息した。年齢別では、2003年と同様に4歳を中心とした幼児の占める割合が高かった。保健所管内別(定点当たり年間患者届出数。以下同じ。)では桑名、尾鷲、上野、四日市の順に多かった。

(2)咽頭結膜熱

 定点当たり年間患者届出数は21.6人で、前年比0.94倍に減少した。流行のピークは例年並みの第30週(1.1人)であったが、年間を通じて患者発生がみられた。また、流行規模は1999年の感染症発生動向調査開始以降で最大となった2003年に次ぐものであった。年齢別では1〜5歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、桑名の順に多かった。

(3)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

 定点当たり年間患者届出数は74.7人で、前年比1.23倍に増加し、1999年の感染症発生動向調査開始以降で最大となった。例年のように2004年当初から6月にかけて流行がみられ、第18週に定点・週当たり患者届出数が3.3人とピークに達した。その後一旦減少し、秋季以降再び増加に転じ、第51週に定点・週当たり患者届出数が2.1人と平年並みのピークとなった。年齢別では4〜6歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、上野の順に多かった。

(4)感染性胃腸炎

 定点当たり年間患者届出数は471.9人で週届出対象5類感染症のなかで最も多く、前年比1.03倍に増加した。流行のパターンは2峰性を示し、1回目は第10週(定点・週当たり患者届出数17.1人)、2回目は第52週(同24.3人)であった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢の順に多かった。

(5)水 痘

 定点当たり年間患者届出数は82.3人で前年比0.97倍に減少した。流行のピークは2003年と同様に第2週で、定点・週当たり患者届出数は5.0人であった。第3週以降は定点・週当たり患者届出数が2人前後で推移し、第34週に最少(同0.44人)となった後再び増加に転じ、第52週の同3.1人まで増加した。年齢別では1〜4歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、津の順に多かった。

(6)手足口病

 定点当たり年間患者届出数は32.9人で前年比1.00倍と、2003年に続いて比較的小規模な流行であった。流行のパターンは例年とは異なり、第22週頃から定点・週当たり患者届出数が増加し始め、第45週にピーク(2.1人)となった。年齢別では1〜3歳が多く、保健所管内別では津、松阪、伊勢の順に多かった。

(7)伝染性紅斑

 定点当たり年間患者届出数は8.4人で、前年比0.45倍と大幅に減少した。定点・週当たり患者届出数は第18週に最大(0.42人)となったが、流行のピークといえるような動向は示しておらず、年間を通じて同程度で散発した。年齢別では4〜6歳が多く、保健所管内別では鈴鹿、熊野、桑名の順に多かった。

(8)百日咳

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は13人で、2001年以降横ばいで推移している(2000年51人、2001年、2002年各12人、2003年10人)。年齢別では1歳未満が多く、保健所管内別では津、鈴鹿、松阪の順に多かった。

(9)風しん

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は8人で、2000年以降増減はあるものの減少傾向を示している(2000年28人、2001年29人、2002年11人、2003年15人)。年齢別では6か月〜1歳未満、4歳、9歳各1人、20歳以上5人、保健所管内別では四日市3人、桑名、鈴鹿各2人、上野1人の届出数であった。

(10)ヘルパンギーナ

 定点当たり年間患者届出数は53.2人で、前年比0.68倍に減少した。第21週に定点・週当たり患者届出数が1人を超え、第25週にピーク(同6.7人)に達した。年齢別では1〜4歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、桑名の順に多かった。

(11)麻しん

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は7人で、2000年以降毎年大幅に減少している(2000年241人、2001年169人、2002年107人、2003年29人)。年齢別では0〜6か月未満1人、6か月〜1歳未満3人、3歳2人、10〜14歳1人、保健所管内別では四日市2人、桑名、鈴鹿、津、伊勢、熊野各1人の届出数であった。

(12)RSウイルス感染症

 定点当たり年間患者届出数は5.0人で、前年比12.4倍と大幅に増加した。流行のパターンは第46週〜第53週の間に2峰を示し、1回目は第48週(同0.76人)、2回目は第52週(同0.91人)であったが、その他の期間では不定期にわずかに散発する状況であった。年齢別では1歳と0〜6歳未満が多く、6か月〜1歳未満、2歳が続いた。保健所管内別では、鈴鹿が特に多かった。

(13)マイコプラズマ肺炎

 基幹定点当たり年間患者届出数は6.9人で前年比0.70倍、小児科定点当たり年間患者報告数は9.2人で前年比0.83倍に減少した。定点・週当たり患者発生状況は、基幹定点では0〜0.56人、小児科定点では0.044〜0.53人の幅で通年不定期に散発した。年齢別では基幹定点、小児科定点ともに1〜9歳が多く、保健所管内別では、基幹定点では伊勢、上野、小児科定点では上野、尾鷲、松阪で多かった。

(14)性感染症

 男性では淋菌感染症が定点当たり年間患者届出数8.6人で最も多かったが、前年比0.89倍に減少し、次に多かったのは性器クラミジア感染症で定点当たり年間患者届出数7.9人、前年比1.12倍に増加した。年齢階級別ではいずれも20〜39歳が多く、保健所管内別では桑名、四日市が目立った。女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数7.4人と最も多かったが、前年比0.69倍に減少した。年齢階級別では2003年と同様に15〜29歳が多く、全体の76.6%を占めた。次に多かったのは性器ヘルペスウイルス感染症で定点当たり年間患者届出数2.1人、前年比0.70倍に減少した。年齢層は幅広く、保健所管内別では鈴鹿、津、伊勢で多かった。

(15)薬剤耐性菌感染症

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は54.7人で、前年比1.04倍、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0.33人で、前年比0.75倍、薬剤耐性緑膿菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0.22人(前年届出数0人)であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は70歳以上が62.4%を占め、年齢が高くなるにつれて多発する傾向がみられた。