2000年感染症発生動向調査情報

1 全数報告対象感染症
 全ての医療機関から届出が必要な感染症の2000年の件数は、1類感染症は0件、2類感染症はコレラ1件、細菌性赤痢7件、腸チフス1件及びパラチフス1件であった。3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症は、四日市市内の保育園でO(オー)26の集団発生(園児10名、家族4名)があり、8月は22件と多数の報告となったが、年間では59件と1999年(4月から12月)の報告並みであった。4類感染症はアメーバー赤痢4件、急性ウイルス肝炎5件、後天性免疫不全症候群12件、ジアルジア症2件、ツツガムシ病3件、梅毒8件、マラリア2件及びレジオネラ症4件であった。

2 定点報告対象感染症
 三重県における週報告対象4類感染症の2000年報告件数は、58,950件であり、感染性胃腸炎(35.9%)、インフルエンザ(30.2%)、水痘(8.3%)の順に多かった。月報告対象4類感染症は1,364件であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(55.1%)、性器クラミジア感染症(26.0%)、淋菌感染症(10.1%)の順に多かった。

2000年に特徴的な発生動向を示した感染症については以下のとおりである。

(1)インフルエンザ
 2000年の報告数は17,774人であった。三重県、全国ともに1999年12月下旬に流行が始まり、1月下旬から2月上旬にかけてピークがみられた。県内では全ての保健所管内で同程度の報告がみられ、年齢別では1999年は20〜39歳代の報告数が多かったが、2000年は1〜14歳の幼児、学童を中心とした報告であった。今シーズン、2000年12月時点では、まだ流行の兆しは認められていない。

(2)咽頭結膜熱
 2000年の報告数は304人であり、1999年に比較し若干名の増加であった。7月から9月にかけて流行が見られ、全国では比較的大きな流行となったが、三重県ではそれほど大きな流行とはならなかった。保健所管内別では、尾鷲、上野、松阪からの報告が目立った。年齢別では1〜5歳の就学前の幼児を中心とした報告であった。

(3)感染性胃腸炎
 2000年の報告数は21,173人であり、1999年に比較し、春季はやや患者数が多く、冬季は少なかった。三重県、全国ともに11月から翌年4月にかけて報告数が多くなった。保健所管内別では、尾鷲、鈴鹿からの報告が目立った。年齢別では1〜4歳の幼児を中心とした報告であった。

(4)手足口病
 2000年の報告数は3,766人であり、1999年に比較し大幅に増加した。三重県、全国ともに比較的大きな流行となり、6月をピークに5月から8月にかけて報告数が多く、後述する無菌性髄膜炎の多発時期と重なる傾向を示した。また、2000年は例年と異なり9月以降も小規模な発生が続いた。保健所管内別では、上野、尾鷲、熊野からの報告が目立った。年齢別では1〜5歳の幼児を中心とした報告であった。

(5)麻疹
 2000年の報告数は241人であり、極めて少数であった1999年に比較すると多数例の報告となった。三重県、全国ともに報告数のピークは5月であった。保健所管内別では、津、松阪、伊勢、上野からの報告が主であり、年齢別では6か月〜1歳の乳児を中心とした報告であった。また、小児科定点からの報告にもかかわらず、10〜19歳、20歳以上の患者発生が目立った。基幹定点からの報告となる成人麻疹は年間で4人であった。

(6)流行性耳下腺炎
 2000年の報告数は2,848人であり、1999年に比較するとほぼ倍の報告であった。三重県、全国ともに例年に比べ比較的大きな流行となっており、10月以降漸増傾向がみられた。保健所管内別では、鈴鹿、伊勢、尾鷲からの報告が目立ち、特に伊勢管内では年末も多発傾向が続いている。年齢別では3〜6歳の幼児を中心とした報告であった。

(7)流行性角結膜炎
 2000年の報告数は379人であり、1999年に比較すると夏季の報告数が多くなった。全国では1999年と同程度の報告数であった。保健所管内別では、尾鷲、熊野で夏季に多くの患者発生がみられ、伊勢では年間を通しての発生がみられた。年齢別では20歳以上の成人を中心とした報告であった。

(8)無菌性髄膜炎
 2000年の報告数は112人であり、1999年に比較するとほぼ倍の報告であった。三重県、全国ともに5月から8月にかけて報告数が多く、前述の手足口病の発生動向と同様の傾向を示した。保健所管内別では、1999年と同様6割が鈴鹿、2割が伊勢からの報告であった。年齢別では1〜14歳の幼児、学童を中心とした報告であった。

(9)性器ヘルペスウイルス感染症
 2000年の報告数は、80人(男43人、女37人)であり、三重県、全国ともに1999年と同程度であった。性別では、全国では女性が多く、三重県では男性が多い傾向がみられた。保健所管内別では、四日市、鈴鹿、上野からの報告が多く、特に、3月に20人(男2人、女18人)と四日市、鈴鹿を中心に多数の報告があった。年齢別では、15〜70歳以上までの広い層での報告があり、1〜4歳でも2人の報告がみられた。

(10)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
 2000年の報告数は、751人であり、1999年に比較すると三重県、全国ともにやや多い発生報告であった。ただし、三重県での定点あたり患者数は、1999年、2000年とも全国に比べ倍程度の報告となっている。保健所管内別では、松阪からの報告数が多いことが目立った。年齢別では、70歳以上を中心とした報告であった。