2002年感染症発生動向調査情報   概要版PDFファイル

 全数報告対象感染症
 全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者報告数は、1類感染症は0人、2類感染症はコレラ1人、細菌性赤痢9人、腸チフス1人、パラチフス1人、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症は27人、4類感染症はアメーバー赤痢5人、オウム病1人、急性ウイルス性肝炎2人、クロイツフェルト・ヤコブ病1人、後天性免疫不全症候群5人、梅毒6人、破傷風2人であった(全数報告対象4類感染症にウエストナイル熱(脳炎を含む)が2002年11月1日付けで追加された)。

 定点報告対象感染症
 4類感染症の週報告対象疾患の患者報告数は50,258人で、2001年(49,745人)に比べて1.0%増加した。定点当たりの月間患者報告数(年間患者報告数÷12月÷定点数)は、感染性胃腸炎(36.01人)、インフルエンザ(15.27人)、水痘(8.16人)の順に多かった。4類感染症の月報告対象疾患の患者報告数は1,182人で、2001年(1,216人)に比べて2.8%減少した。このうち、STD定点報告の性感染症は575人で、2001年(603人)に比べて4.6%減少した。定点当たりの月間患者報告数が多かった疾患は、男性では淋菌感染症(1.04人)、女性では性器クラミジア感染症(0.87人)であった。基幹定点報告の薬剤耐性菌感染症は607人で、2001年(613人)に比べて1.0%減少した。定点当たりの月間患者報告数が多かった疾患はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(5.32人)であった。

2002年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1)インフルエンザ
 定点当たり月間患者報告数は15.27人で、前年比1.92と増加した。流行開始の目安となる定点当たり患者報告数1.0人を超えたのは第2週1.6人で、第6週に25.7人まで増加したが、第7週に21.0人と一旦減少し、第8週28.5人と再び増加に転じて最大となった。第15週には1.0人以下となり終息した。年齢別では、1月には4歳を中心とした幼児、2〜3月には7歳を中心とした学童の占める割合が高かった。保健所管内別では尾鷲、伊勢、鈴鹿保健所管内の順に多く、熊野保健所管内で少なかった。また、02/03シーズンは昨シーズンに比べて流行開始時期が早く、10月下旬頃から北勢地域を中心に散発し始め、定点当たり患者報告数1.0人を超えたのは第51週1.7人、ピークは2003年第4週47.2人であった。
 
(2)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 定点当たり月間患者報告数は4.56人で、前年比1.22と増加した。毎年一定の流行がみられ、夏季までの流行は昨年と同程度であったが、第43週以降患者報告数が急増し、第48週2.7人をピークに過去3年で最大の流行となった。年齢別では5歳を中心に4〜7歳児が57.7%と半数以上を占めて多く、保健所管内別では鈴鹿保健所管内で多かった。

(3)感染性胃腸炎
 定点当たり月間患者報告数は36.01人で前年比0.96と微減したが、前年とよく似た流行規模、パターンであった。流行のピークは、上半期は第6週15.7人及び第8週15.2人、下半期は第51週27.1人であった。年齢別では、1歳児を中心に幼児に多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿保健所管内の順に多かった。

(4)伝染性紅斑
 定点当たり月間患者報告数は2.86人で、前年比0.93と微減した。5年毎に大きなピークがみられる疾患で、1997年以降の患者発生は少なかったが、2001年から2002年上半期にかけて流行がみられ、第27週1.6人をピークに終息した。その流行様相は県内でも地域によってやや異なっており、2001年夏季は北勢地域を中心に、2001年12月から2002年1月にかけては松阪、尾鷲保健所管内を中心に、その後2002年夏季にかけては上野保健所管内を中心とする中南勢地域で流行がみられた。年齢別では5歳を中心に4〜7歳児が56.3%と半数以上を占めた。
 
(5)ヘルパンギーナ
 定点当たり月間患者報告数は4.72人で、前年比1.02と同程度であった。流行の開始は昨年と同時期であったが、2001年の流行の立ち上がりが急峻で、ピークが第26〜29週の4週に亘ってみられたのに対し、2002年は立ち上がりが緩やかで、ピークも第30週と遅れた。また、ピーク時の定点当たり患者報告数は6.8人で、昨年7.4人に比べてやや小規模となった。年齢別では1歳児を中心に乳幼児に多く、保健所管内別では鈴鹿保健所管内で多かった。

(6)無菌性髄膜炎
 定点当たり月間患者報告数は1.11人で、前年比2.31と大幅に増加した。定点当たり患者報告数は5月下旬以降増加し始め、第26週1.6人、第31週1.7人をピークに過去3年間で最大の流行となった。年齢階級別では5〜9歳児が48.3%と多く、また親世代と思われる25〜39歳も11.7%を占めた。保健所管内別では鈴鹿保健所管内で多かった。原因ウイルスとしては国内では過去にほとんど流行が認められていなかったエコーウイルス13型が分離された。

(7)性感染症
 男性では淋菌感染症が定点当たり月間患者報告数1.04人と最も多く、前年比
 1.21と増加した。年齢階級別では15〜19歳が2年連続で減少したが、20〜24歳、30〜34歳、45〜49歳の増加が目立ち、20〜34歳が全体の70.2%を占めた。女性では性器クラミジア感染症が定点当たり月間患者報告数0.87人と最も多かったが、前年比は0.88と減少した。年齢階級別では15〜19歳、25〜29歳で減少が目立ったが、20〜24歳を中心に15〜34歳が84.0%を占めた。

(8)薬剤耐性菌感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)の定点当たり月間患者報告数は5.32人、前年比0.95、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症(PRSP感染症)の定点当たり月間患者報告数は0.15人、前年比1.0、薬剤耐性緑膿菌感染症の定点当たり月間患者報告数は0.15人、前年比4.0であった。特に、薬剤耐性緑膿菌感染症は過去3年間(累計8人)に比べて増加が目立った。年齢階級別ではいずれの疾患でも高齢者に多い傾向がみられた。