2005年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

1)感染症法に基づく全数把握

 全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者届出数は、2類感染症のコレラが3人(いずれもO1エルトール小川型)、細菌性赤痢が5人(いずれもS.sonnei)、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症が39人(O157:35人(うち保菌者18人)、O26:3人、型別不明:1人(保菌者))、4類感染症のE型肝炎が4人、コクシジオイデス症が1人、つつが虫病が4人、デング熱が1人、日本紅斑熱が2人、日本脳炎が1人、レジオネラ症が2人、5類感染症のアメーバ赤痢が1人、ウイルス性肝炎が4人、急性脳炎が4人、クロイツフェルト・ヤコブ病が1人、後天性免疫不全症候群が14人、梅毒が6人、破傷風が1人であった。

2)三重県独自の取り組みによる全数把握

 2004年9月27日から開始した「麻しん・風しん患者全数把握調査」による2005年の患者報告数は、麻しん、風しんともに0人であった(2004年9月27日〜12月末までの間は風しん患者2人)。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(73機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は68,521人で、2004年(51,416人)に比べ33.3%増加した。定点当たり年間患者届出数(年間患者届出数÷定点数)の上位5疾患は、感染性胃腸炎(455.8人)、インフルエンザ(385.3人)、ヘルパンギーナ(117.2人)、水痘(90.1人)、流行性耳下腺炎(57.2人)の順で、2004年に比べ増加が目立ったのは、インフルエンザ(2.1倍)、ヘルパンギーナ(2.2倍)、流行性耳下腺炎(2.2倍)、RSウイルス感染症(2.6倍)、流行性角結膜炎(2.7倍)等であった。 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性296人、女性210人で、2004年(男性307人、女性158人)に比べ男性は3.6%減少したが、女性は32.9%増加した。定点当たり年間患者届出数が多かったのは、男性では淋菌感染症(8.3人)、女性では性器クラミジア感染症(9.9人)であった。また、基幹定点からの患者届出数は544人で、2004年(497人)に比べ9.5%増加した。定点当たり年間患者届出数が多かったのは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(59.4人)であった。

(1)インフルエンザ

 定点当たり年間患者届出数は385.3人で、前年比2.08倍に増加した。定点・週当たり患者届出数が流行の目安とされる1人を超えたのは2005年第2週(同1.4人)で、2005年第7週にピーク(同54.6人)に達した。その後、第19週に同1人を下回ったが、患者発生は夏季まで続いた。流行期を同10人以上となった週数で表すと、1999/2000年、2000/01年、2002/03年、2003/04年が6週間、2001/02年が7週間であったが、2004/05年は10週間と長く、最近6シーズンで最大規模となった。年齢別では、5〜6歳を中心とした幼児の占める割合が高かった。保健所管内別(定点当たり年間患者届出数。以下同じ。)では尾鷲、桑名、鈴鹿の順に多かった。

(2)咽頭結膜熱 

  定点当たり年間患者届出数は15.0人で、前年比0.70倍と2年連続で減少した。流行のピークは平年並みの第21週(定点・週当たり患者届出数0.7人)で、夏季の患者発生が比較的小規模であった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、桑名、上野、伊勢の順に多かった。

(3)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

  定点当たり年間患者届出数は48.0人で、前年比0.64倍に減少した。流行のピークは平年並みの第22週(定点・週当たり患者届出数2.0人)であった。その後一旦減少し、秋季以降再び増加に転じ、11月頃からは同1人前後で推移した。年齢別では4〜5歳が多く、保健所管内別では2004年に多かった尾鷲は減少し、鈴鹿が多かった。

(4)感染性胃腸炎

  定点当たり年間患者届出数は455.8人で週届出対象5類感染症の中で最も多かったが、前年比0.97倍に減少した。流行のピークは第50週で、定点・週当たり患者届出数26.4人と1999年以降では2002年に次いで2番目に高かったが、例年2〜3月にかけてみられるピークは認められなかった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢の順に多かった。

(5)水 痘

 定点当たり年間患者届出数は90.1人で前年比1.1倍に増加した。流行のピークは第23週で、定点・週当たり患者届出数は3.3人であった。その後一旦減少し、秋季以降再び増加に転じ、第51週の同2.8人まで増加した。年齢別では3歳が最も多く、保健所管内別では鈴鹿、伊勢、上野の順に多かった。

(6)手足口病

  定点当たり年間患者届出数は24.0人で前年比0.73倍に減少した。流行のピークは第28週で、定点・週当たり患者届出数1.8人と2002年以降は比較的小規模となっている。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では熊野、上野の順に多かった。

(7)伝染性紅斑

 定点当たり年間患者届出数は8.8人で、前年比1.04倍と、2004年と同様に小規模であった。定点・週当たり患者届出数は第26週に最大(0.42人)となったが、年間を通じて同程度で散発した。年齢別では4歳が最も多く、保健所管内別では伊勢が多かった。また、これまで三重県、全国ともに1991〜1992年、1996〜1997年、2001〜2002年とそれぞれ2年に亘る流行が3年おきにみられていることから(5年周期)、次の流行期は2006年〜2007年にかけてと予想される。

(8)百日咳

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は16人で、2001年以降横ばいで推移している(2000年51人、2001年、2002年各12人、2003年10人、2004年13人)。年齢別では1歳未満が多く、保健所管内別では松阪、四日市の順に多かった。

(9)風しん

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は2004年第28週以降0人となっている。2000年以降増減はあるものの少数で推移している(2000年28人、2001年29人、2002年11人、2003年15人、2004年8人)。

(10)ヘルパンギーナ

 定点当たり年間患者届出数は117.2人で、前年比2.20倍に増加した。第21週に定点・週当たり患者届出数が1人を超え、第27週をピーク(同17.8人)に前例のない大きな流行となり、第37週に同1人を下回り終息した。年齢別では1〜4歳が多く、保健所管内別では鈴鹿、尾鷲、桑名の順に多かった。

(11)麻しん

 小児科定点45機関からの年間患者届出数は2004年第26週以降0人となっている。2000年以降毎年大幅に減少している(2000年241人、2001年169人、2002年107人、2003年29人、2004年7人)。

(12)流行性耳下腺炎

 定点当たり年間患者届出数は57.2人で、前年比2.22倍に増加した。流行のピークは第20週で、定点・週当たり患者届出数は2.0人であった。1〜3月上旬及び9月頃にやや減少傾向を示したものの、年間通じて同1人前後の高い水準で推移した。年齢別では3〜6歳が多く、保健所管内別では鈴鹿が多かった。

(13)RSウイルス感染症

 定点当たり年間患者届出数は13.1人で、前年比2.63倍と大幅に増加した。夏季にも小流行がみられるなど、年間を通じて患者発生があった。流行のピークは第49週で、定点・週当たり患者届出数は2.2人であった。年齢別では0〜1歳が多く、保健所管内別では、鈴鹿が特に多かった。

(14)流行性角結膜炎

 定点当たり年間患者届出数は38.5人で、前年比2.69倍と大幅に増加した。近年、患者数が少なく季節性がみられなくなっていたが、7〜9月にかけて急峻なピークを示した。第27週に定点・週当たり患者届出数が1人を超えると、第34週には1999年以降最も大きな規模(同4.1人)となり、第39週に同1人を下回り終息した。年齢別では1〜5歳が多く、保健所管内別では、伊勢、津が多かった。

(15) マイコプラズマ肺炎

 基幹定点当たり年間患者届出数は10.2人で前年比1.48倍に増加し、小児科定点当たり年間患者報告数は7.2人で前年比0.79倍に減少した。定点・週当たり患者発生状況は、基幹定点では0〜0.78人、小児科定点では0〜0.51人の幅で通年不定期に散発したが、秋季以降やや増加する傾向がみられた。年齢別では、基幹定点では1〜4歳が多く、小児科定点では5歳が最も多かった。保健所管内別では、基幹定点、小児科定点ともに伊勢、上野で多かった。

(16)性感染症

  男性では淋菌感染症が定点当たり年間患者届出数8.3人で最も多かったが、前年比0.96倍と2002年をピークに減少しており、次に多い性器クラミジア感染症も定点当たり年間患者届出数7.1人、前年比0.90倍と減少した。年齢階級別ではいずれも20〜24歳が最も多く、保健所管内別では桑名が目立った。尖形コンジローマは届出数は少ないものの幅広い年齢層で増加がみられ、保健所管内別では桑名が目立った。  女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数9.9人と最も多く、前年比1.33倍に増加し、年齢階級別では2004年と同様に15〜29歳が全体の75.0%を占め、保健所管内別では鈴鹿で増加した。他3疾患についても、届出数は少ないものの20代を中心に増加がみられた。

(17)薬剤耐性菌感染症

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は59.4人で、前年比1.09倍、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0.44人で、前年比1.33倍、薬剤耐性緑膿菌感染症の定点当たり年間患者届出数は0.56人で、前年比2.50倍であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は70歳以上が63.2%を占め、年齢が高くなるにつれて多発する傾向がみられた。