2006年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

1)感染症法に基づく全数把握

 2006年(2006年1月2日〜12月31日)における全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者数は、2類感染症の細菌性赤痢が3人(全てS.sonnei)、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症が32人(全てO157)、4類感染症のE型肝炎が1人、A型肝炎が2人、エキノコックス症が1人、つつが虫病が2人、日本紅斑熱が2人、ライム病が1人、レジオネラ症が6人、5類感染症のアメーバ赤痢が9人、ウイルス性肝炎が14人(全てB型)、急性脳炎が4人(インフルエンザ脳症2人、ノロウイルスGU1人、病原体不明1人)、クロイツフェルト・ヤコブ病が3人、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が1人、後天性免疫不全症候群が13人、梅毒が8人であった。アメーバ赤痢とウイルス性肝炎は、1999年4月に現行の感染症法が施行されて以降では最多で、後天性免疫不全症候群は2005年に次いで2番目に多かった。また、エキノコックス症(50歳代女性、北海道道東地区に居住歴有り)、ライム病(40歳代男性)は、1999年4月以降では初の届出であった。

2)三重県独自の取り組みによる全数把握

 2004年9月27日から開始した「麻しん・風しん患者全数把握調査」による2006年の患者報告数は、麻しん、風しんともに0人であった(2004年9月27日〜12月末までの間は風しん患者2人)。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(73機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は65,488人で、2005年(68,521人)に比べ4.4%減少した。定点当たり年間患者届出数(年間患者届出数÷定点数)の上位5疾患は、感染性胃腸炎(548.8人)、インフルエンザ(231.7人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(101.1人)、水痘(100.5人)、流行性耳下腺炎(87.6人)の順で、2005年に比べ増加が目立ったのは、咽頭結膜熱(3.5倍)、手足口病(2.8倍)、伝染性紅斑(2.2倍)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(2.1倍)、マイコプラズマ肺炎(三重県独自)(2.1倍)等であった。【表3〜4】 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性285人、女性247人で、2005年(男性296人、女性210人)に比べ男性は3.7%減少したが、女性は17.6%増加した。定点当たり年間患者届出数が多かったのは、男性では性器クラミジア感染症(7.3人)、淋菌感染症(7.3人)で、女性では性器クラミジア感染症(13.2人)であった。また、基幹定点からの患者届出数は448人で、2005年(544人)に比べ17.6%減少した。定点当たり年間患者届出数が多かったのは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(48.1人)であった。

(1)インフルエンザ

  定点当たり年間患者届出数は231.7人で、前年比0.60倍に減少した。2005/06年前半はAH3亜型を中心とするAH1亜型との混合流行で、2005年第52週に定点・週当たり患者届出数が流行開始の目安とされる1人を超え、2006年第4週にピーク(同42.5人)に達した。第14週には同1人を下回ったが、その後、桑名、伊勢保健所管内を中心とするB型の流行により再び増加し、第20週(同1.3人)をピークに第29週まで患者発生がみられた。年齢別では、前半は5歳を中心に幼小児の占める割合が高く、後半は10〜14歳を中心に中学・高校生の占める割合が高かった。保健所管内別では、前半は鈴鹿、伊勢、桑名の順に多く、後半は伊勢、桑名、松阪の順に多かった。なお、2006/07年の初発は第48週で、定点・週当たり患者届出数1人を超えたのは2007年第3週と流行開始時期が1999/00年以降では2000/01年に次いで2番目に遅かった。

(2)咽頭結膜熱 

   定点当たり年間患者届出数は52.8人で、前年比3.52倍と大幅に増加し、全国的にも過去最大規模の流行となった。大流行した2003年より4週早い第20週に定点・週当たり患者届出数1人を超え、第29週(同2.5人)にピークに達し、秋季以降も増減を繰り返しながら高い水準で推移した。年齢別では3〜4歳が多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢の順に多かった。

(3)A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

   定点当たり年間患者届出数は101.1人で、前年比2.11倍に増加し、全国的にも過去最大規模の流行となった。年間通じて高い水準で推移し、第11週に定点・週当たり患者届出数4.2人と過去最大規模の急峻なピークがみられ、その後一旦減少し、第21週の同3.5人をピークに晩春から初夏にかけて例年を大きく上回る流行がみられた。秋季以降も再び増加傾向を示し、第50週の同2.7人をピークに流行が続いた。年齢別では5歳が多く、保健所管内別では鈴鹿が多かった。

(4)感染性胃腸炎

   定点当たり年間患者届出数は548.8人で、前年比1.20倍に増加し、週届出対象5類感染症の中で最も多かった。例年より4週程度早い流行開始となり、同様にピークも第47週と早まり、定点・週当たり患者届出数は33.5人と1999年以降では最大規模となった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢の順に多かった。

(5)水 痘

 定点当たり年間患者届出数は100.5人で前年比1.12倍に増加した。流行のピークは第12週(定点・週当たり患者届出数3.3人)、第24週(同3.2人)、第52週(同3.3人)の3回みられ、年齢別では3歳が最も多かった。保健所管内別では尾鷲が目立って多く、同管内では2月中旬〜5月中旬にかけて3〜4歳を中心とする大きな流行がみられた。

(6)手足口病

   定点当たり年間患者届出数は67.3人で前年比2.81倍に増加した。流行のピークは第30週で、定点・週当たり患者届出数5.2人と1999年以降では2000年、2001年に次いで3番目に大きい流行となった。秋季以降も局地的な流行が続き、特に鈴鹿保健所管内では第50〜51週(保健所管内別・定点・週当たり患者届出数3.3人)をピークとする流行がみられた。年齢別では2歳を中心に1〜3歳が多かった。

(7)伝染性紅斑

  定点当たり年間患者届出数は19.5人で、前年比2.22倍に増加した。流行のピークは第25週で、定点・週当たり患者届出数は0.8人であった。年齢別では5歳が多く、保健所管内別では、鈴鹿、伊勢、四日市の順に多かった。また、これまで三重県、全国ともに1991〜1992年、1996〜1997年、2001〜2002年とそれぞれ2年に亘る流行が3年おきにみられていること(5年周期)から、2006年に続き2007年も患者数の増加が見込まれ、特に2006年に顕著な流行がみられなかった津、松阪、伊賀、尾鷲保健所管内等での動向が注目される。

(8)流行性耳下腺炎

  定点当たり年間患者届出数は87.6人で、前年比1.53倍に増加した。4〜5年周期で大きな流行がみられるが、第23週の定点・週当たり患者届出数2.9人をピークに、1999年以降では2001年に次いで2番目に大きい流行となった。年齢別では4〜5歳が多かった。保健所管内別では伊勢が目立って多く、津、松阪、伊賀では冬季に患者届出数の増加がみられた。

(9)RSウイルス感染症

  定点当たり年間患者届出数は7.7人で、前年比0.59倍に減少した。年齢別では0〜5ヶ月齢が多く、保健所管内別では、鈴鹿が多かった。通常の流行期は12月をピークに11〜1月にかけてであるが、今冬は12月中旬〜2月にかけてと遅く、ピークは2007年第5週でピーク時の定点・週当たり患者届出数は3.0人と調査開始の2003年以降で最大規模となっている。

(10)マイコプラズマ肺炎

  基幹定点当たり年間患者届出数は7.3人で前年比0.72倍に減少したが、小児科定点当たり年間患者報告数は15.0人で前年比2.08倍に増加し、2003年の調査開始以降では最も高い水準となった。定点・週当たり患者届出数は、基幹定点では0〜0.67人、小児科定点では0〜0.56人の幅で通年不定期に散発し、秋季以降やや増加する傾向がみられた。年齢別では、基幹定点では1〜4歳が多く、小児科定点では5〜6歳が多かった。保健所管内別では、基幹定点では伊勢、伊賀の順で多く、小児科定点では津、鈴鹿、四日市の順で多かった。

(11)性感染症

   男性では淋菌感染症が定点当たり年間患者届出数7.33人(前年比0.89倍)、性器クラミジア感染症が同7.27人(前年比1.02倍)と多かったが、淋菌感染症は2002年をピークに減少傾向を示し、性器クラミジア感染症はほぼ横這い状態となっている。両疾患とも年齢階級別では20〜24歳、25〜29歳が多く、保健所管内別では桑名が多かった。  女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数13.2人と最も多く(前年比1.34倍)、調査開始の1999年以降は減少傾向を示していたが、2004年を最小に増加に転じており、今後の動向が注目される。年齢階級別では15〜19歳、20〜24歳、30〜34歳で増加し、保健所管内別では鈴鹿での増加が目立った。他3疾患は微減したが、いずれも鈴鹿保健所管内で多かった 。

(12)薬剤耐性菌感染症

  メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は定点当たり年間患者届出数48.1人(前年比0.81倍)で、例年届出数の多い松阪、津の両保健所管内で減少し、調査開始の1999年以降では最も低い水準となった。年齢階級別では70歳以上が63.3%を占め、年齢が高くなるにつれて多発する傾向がみられた。ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は同1.11人(前年比2.50倍)で、鈴鹿、津保管所管内で散発がみられた。薬剤耐性緑膿菌感染症は同0.56人と前年と同水準で、鈴鹿、松阪、熊野保健所管内で散発がみられた。