2007年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

1) 感染症法に基づく全数把握

 2007年(2007年1月1日〜12月30日)における全ての医療機関から届出が必要な   感染症の届出数は、2類感染症の結核が418人、3類感染症の細菌性赤痢が3人(S.sonnei:2人、S. flexneri:1人)、3類感染症の腸管出血性大腸菌感染症が29人(O157:23人、O26:5人、O91:1人)、腸チフスが1人、4類感染症のE型肝炎、A型肝炎が各4人、日本紅斑熱が24人、マラリアが2人、レジオネラ症が12人、5類感染症のアメーバ赤痢が7人、ウイルス性肝炎が2人(全てB型肝炎)、急性脳炎が3人(A型インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、病原体不明が各1人)、クロイツフェルト・ヤコブ病が2人、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が1人、後天性免疫不全症候群が18人、ジアルジア症が1人、梅毒が13人、破傷風が2人であった。
 これらのうち、日本紅斑熱、レジオネラ症、後天性免疫不全症候群、梅毒の届出数は1999年4月に現行の感染症法が施行されて以降では最多となった。

2) 三重県独自の取り組みによる全数把握

 2004年9月27日から開始した「麻しん・風しん患者全数把握調査」による2007年の患者報告数は、麻しん15人、成人麻しん25人、風しん4人であった(2004年9月27日〜2006年12月末までの間は風しん患者2人)。
 なお、麻しん及び成人麻しんの施設内集団発生事例の報告はなかった。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(73機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は61,005人で、2006年(65,488人)に比べ6.8%減少した。
 疾患別にみると、感染性胃腸炎(定点当たり年間患者届出数425.6人)、インフルエンザ(同301.8人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(同92.9人)、水痘(同85.1人)、ヘルパンギーナ(同68.4人)の順に多く、2006年に比べ増加が目立ったのは、伝染性紅斑、ヘルパンギーナ、RSウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎(基幹定点)などであった。また、麻しん(5例/45機関)は2004年第25週以来の届出、成人麻しん(7例/9機関)は2003年第22週以来の届出で、いずれも散発例であった。
 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性261人、女性197人で、2006年(男性285人、女性247人)に比べ男性が8.4%、女性が20.2%減少した。疾患別にみると、男性は淋菌感染症(定点当たり年間患者届出数7.2人)、女性は性器クラミジア感染症(同9.7人)が多かった。また、基幹定点からの患者届出数は566人で、このうち96.6%をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(定点当たり年間患者届出数60.8人)が占めた。
 2007年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1) インフルエンザ

 定点当たり年間患者届出数は301.8人で、前年比1.30倍に減少した。2006/07年はAH3亜型とB型の混合流行で、特に桑名保健所管内で多かった。2007年第3週に定点・週当たり患者届出数が流行開始の目安とされる1人を超え、第9週にピーク(同40.4人)に達した。第19週には同1人を下回ったが、その後、5月から6月にかけて伊勢保健所管内を中心とするAH1亜型の流行が目立った。年齢別では、7歳を中心に6〜9歳の学童の占める割合が高かった。また、2007/08年の初発は2007年第42週で、11月中頃から四日市、伊勢管内を中心に増加傾向がみられ、流行開始の目安とされる定点・週当たり患者届出数1人を超えたのは第50週(同1.7人)と過去5シーズンに比べ1〜5週早い開始となった。

(2) A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

 定点当たり年間患者届出数は92.9人で、前年比0.92倍と微減したが、前期は昨年に引き続き高い水準で推移し、流行のピークは第22週の定点・週当たり患者届出数4.1人と前年のピーク値(第11週:同4.2人)と同程度で、1999年以降の例年同時期では最高値であった。秋季以降も再び増加し、第50週の同2.5人をピークとする流行がみられた。年齢別では4〜5歳が多く、保健所管内別では、昨年に続いて大きな流行のみられた鈴鹿が最も多く、尾鷲、津が順に続いた。

(3) 感染性胃腸炎

 定点当たり年間患者届出数は425.6人で、前年比0.78倍と減少した。流行の開始時期は例年並みで、ピークは第51週の定点・週当たり患者届出数29.1人と1999年以降では大流行した昨年(第47週:同33.5人)に次いで2番目に高かった。年齢別では1歳が最も多く、保健所管内別では尾鷲、鈴鹿、伊勢の順に多かった。

(4) 水 痘

 定点当たり年間患者届出数は85.1人で前年比0.85倍に減少した。前年に比べ、2〜3月は低い水準で推移したが、5〜6月にかけては同程度で、流行のピークは第19週の定点・週当たり患者届出数3.3人、第22〜23週の同3.2人であった。年齢別では3歳を中心に、1〜4歳の幼児に多かった。保健所管内別では伊勢、津で多く、他管内では減少した。

(5) 手足口病

 定点当たり年間患者届出数は27.5人で前年比0.41倍に減少した。流行のピークは第29〜30週の定点・週当たり患者届出数1.6人と小規模な流行であった。年齢別では1歳を中心に1〜4歳の幼児に多かった。保健所管内別では尾鷲で1〜5月にかけて二峰性の流行がみられ、増加が目立った。 

(6) 伝染性紅斑

 定点当たり年間患者届出数は28.0人で、前年比1.44倍に増加した。流行のピークは第23週で、定点・週当たり患者届出数は1.5人であった。年齢別では4〜5歳が多かった。保健所管内別では、尾鷲、伊賀で多く、昨年に顕著な流行がみられなかった津、松阪、伊賀、尾鷲、熊野で増加が目立った。これまで1996〜1997年、2001〜2002年、2006〜2007年とそれぞれ2年に亘る流行が5年周期でみられていることから、次の流行は2011〜2012年になることが見込まれる。

(7) ヘルパンギーナ

 定点当たり年間患者届出数は68.4人で、前年比2.43倍に増加した。流行のピークは第29週(定点・週当たり患者届出数9.8人)〜第30週(同10.0人)で、比較的大きな流行となった。年齢別では1〜2歳が多く、保健所管内別では鈴鹿、尾鷲で多かった。

(8) 流行性耳下腺炎

 定点当たり年間患者届出数は38.4人で、前年比0.44倍に減少した。流行のピークは第5週の定点・週当たり患者届出数1.7人で、前年の秋季以降、津、松阪、伊賀保健所管内でみられた流行が夏季まで続いたが、その後は漸減し、1999年以降では最も低い水準で推移した。年齢別では4〜5歳が多く、保健所管内別では津、伊賀、松阪の順に多かった。

(9) RSウイルス感染症

 定点当たり年間患者届出数は24.4人で、前年比3.15倍に増加した。通常の流行は12月をピークに11〜1月にかけてみられるが、昨冬のピークは2007年第5週(定点・週当たり患者届出数3.0人)と遅く、流行規模は2003年の調査開始以降では最大となった。今冬の流行のピークは2007年第51週(同1.4人)であった。年齢別では1歳、6〜11か月齢、0〜5か月齢の順に多く、保健所管内別では鈴鹿、津、尾鷲の順に多かった。

(10) マイコプラズマ肺炎

 基幹定点当たり年間患者届出数は16.9人で前年比2.3倍に増加し、1999年の調査開始以降では最も高い水準となった。小児科定点当たり年間患者報告数は7.9人で前年比0.53倍に減少した。ピークは、基幹定点では第19週の定点・週当たり患者届出数1.4人、小児科定点では第2週の同0.5人であった。年齢別では、基幹定点では1〜4歳が多く、小児科定点では6歳、4歳が多かった。保健所管内別では、基幹定点では伊賀、伊勢で多く、小児科定点では伊賀、四日市で多かった。

(11) 性感染症

 男性では淋菌感染症が定点当たり年間患者届出数7.2人(前年比0.98倍)で最も多く、性器クラミジア感染症が同5.8人(前年比0.8倍)と続いたが、淋菌感染症は2003年以降、性器クラミジア感染症は2002年以降、漸減傾向を示している。両疾患とも、年齢階級別では25〜29歳、30〜34歳が多く、保健所管内別では桑名が多かった。一方、尖圭コンジローマは定点当たり年間患者届出数2.0人(前年比1.43倍)と4疾患中で最も少ないが、2003年以降、漸増傾向を示している。年齢階級別では30〜34歳が多く、保健所管内別では桑名が多かった。
 女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数9.7人(前年比0.74倍)で最も多く、性器ヘルペスウイルス感染症が同2.3人(前年比1.09倍)と続いた。性器クラミジア感染症は、2004年を最小に2年連続で増加していたが、2005年の水準まで減少した。年齢階級別では20〜24歳、25〜29歳の順に多く、保健所管内別では鈴鹿での増加が目立った。他3疾患はいずれも横這い状態で推移し、年齢階級、保健所管内別でも目立った変化はみられなかった。

(12) 薬剤耐性菌感染症

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は定点当たり年間患者届出数60.8人(前年比1.26倍)で、保健所管内別では鈴鹿、津、松阪、四日市の順に多く、年齢階級別では70歳以上が64.2%を占め、年齢が高くなるにつれて増加する傾向がみられた。ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は同1.7人(前年比1.5倍)で、鈴鹿、津、伊賀保管所管内で散発がみられた。薬剤耐性緑膿菌感染症は同0.4人(前年比0.8倍)で、鈴鹿、松阪、伊賀保健所管内で散発がみられた。