2009年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

 2009年(2008年12月29日〜2010年1月3日)における全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者数は、2類感染症の結核が376人、3類感染症の細菌性赤痢7人、腸管出血性大腸菌感染症が39人(O157:34人、O26:3人、O111:1人、O165:1人)、4類感染症のE型肝炎が2人、A型肝炎が3人、つつが虫が8人、デング熱が1人、日本紅斑熱が33人、レジオネラ症が11人、レプトスピラ症が1人、5類感染症のアメーバ赤痢が3人、急性脳炎が5人(新型インフルエンザウイルス3人、病原体不明2人)、クロイツフェルト・ヤコブ病が7人、後天性免疫不全症候群が6人(感染者1人、患者5人)、梅毒が20人、風しんが2人、麻しんが2人であった。なお、日本紅斑熱は、いずれも伊勢保健所管内での発生であった。レプトスピラ症は、三重県では調査開始以来初の報告である。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(72機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は75,263人で、2008年(53,666人)に比べ40.3%増加した。疾患別にみると、インフルエンザ(定点当たり年間患者届出数633.9人)、感染性胃腸炎(同376.4人)、水痘(同72.4人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(同55.1人)、ヘルパンギーナ(同48.9人)の順に多く、2008年に比べ増加が目立ったのは、インフルエンザのみで他の疾患の多くは減少した。【表3〜4】
5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性202人、女性162人で、2008年(男性198人、女性200人)に比べ男性が2.0%増加、女性が19.0%減少した。疾患別にみると、男女とも性器クラミジア感染症(定点当たり年間患者届出数男:5.8人、女:7.1人)が多かった。また、基幹定点からの患者届出数は439人で、このうち97.9%をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(定点当たり年間患者届出数47.8人)が占めた。

2009年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1) インフルエンザ
 定点当たり年間患者届出数は633.9人で、前年比3.42倍に増加した。2008/09年は、AH1亜型、AH3亜型及びB型の混合流行であった。初発は2008年第40週で、12月から桑名、伊勢保健所管内を中心に増加傾向がみられ、流行開始の目安とされる定点・週当たり患者届出数1人を超えたのは2008年第51週(同1.7人)と過去5シーズンでは、昨シーズンに次いで早い開始となった。第5週(同35.8人)にピークとなり減少に転じたが、6月以降は新型インフルエンザ(AH1pdm)が流行し始め第34週には患者届出数1人を超え2009/10年の流行へと続いた。2009/10年は、2010年初めまで新型インフルエンザ(AH1pdm)の単流行で桑名保健所管内を中心に増加し第44週にピーク(同46.1人)となり第8週現在、同1.3人となった。

(2) A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 定点当たり年間患者届出数は55.1人で、前年比0.63倍に減少した。年初は前年に引き続き高い水準で推移したが、流行のピークは第10週の定点・週当たり患者届出数2.7人と前年のピーク値(第23週:同3.5人)より少なかった。春季以降は例年に比較し報告数が少なく秋期以降の流行は見られなかった。年齢別では4〜5歳が多く、保健所管内別では、鈴鹿、桑名が多かった。

(3) 感染性胃腸炎
 定点当たり年間患者届出数は376.4人で、前年比0.81倍に減少した。例年ピークとなる第51週ごろの報告数は少なく、2009/10年シーズンのピークは2010年第1週の定点・週当たり患者届出数15.4人と2008/09年(第51週:同25.4人)に比べ低かった。年齢別では1歳が最も多く、さらに2〜4歳の幼児に多かった。保健所管内別では尾鷲、伊勢、鈴鹿が多かった。

(4) 水 痘
定点当たり年間患者届出数は72.4人で前年比0.95倍に減少した。前年に比べ、1〜4月は高い水準で推移したが、6月以降は低い水準で推移し、流行のピークは第2週の定点・週当たり患者届出数4.2人であった。年齢別では2歳を中心に、1〜4歳の幼児に多かった。保健所管内別では伊勢、津、鈴鹿、伊賀、尾鷲で多かった。

(5) 手足口病
 定点当たり年間患者届出数は8.6人で前年比0.09倍に減少した。流行のピークは第29週の定点・週当たり患者届出数0.8人となった。前年は、1999年以降では最大の流行となったが、今年は年を通して非常に低い水準で推移した。年齢別では1歳を中心に1〜5歳の幼児に多かった。保健所管内別では伊賀、松阪で多かった。

(6) 伝染性紅斑
定点当たり年間患者届出数は4.6人で、前年比1.02倍に増加した。流行のピークは第29週で、定点・週当たり患者届出数は0.4人であった。年齢別では1〜4歳が多かった。保健所管内別では、伊勢で多かったが低い水準で推移した。これまで1991〜1992年、1996〜1997年、2001〜2002年、2006〜2007年とそれぞれ2年に亘る流行が5年周期でみられていることから、次の流行は2011〜2012年になることが見込まれる。

(7) ヘルパンギーナ
定点当たり年間患者届出数は48.9人で、前年比0.96倍に減少した。流行のピークは第29週(定点・週当たり患者届出数6.5人)で、中程度の流行となった。年齢別では1〜2歳が多く、保健所管内別では桑名で多かった。

(8) 流行性耳下腺炎
定点当たり年間患者届出数は17.7人で、前年比1.31倍に増加した。流行のピークは第31週の定点・週当たり患者届出数0.8人で、前年に続き低い水準で推移した。年齢別では4〜5歳が多く、保健所管内別では尾鷲、四日市市で多かった。

(9) RSウイルス感染症
定点当たり年間患者届出数は10.4人で、前年比0.52倍に減少した。流行のピークは第52週(同1.0人)であった。年齢別では1歳、0〜5か月齢、6〜11か月齢の順に多く、保健所管内別では鈴鹿、津で多かった。

(10) マイコプラズマ肺炎
 基幹定点当たり年間患者届出数は4.8人で前年比0.49倍に減少した。小児科定点当たり年間患者報告数は4.8人で前年比0.71倍に減少した。ピークは、基幹定点では第8週の定点・週当たり患者届出数0.4人、小児科定点では第37週の同0.2人であった。年齢別では、基幹定点では1〜14歳が多く、小児科定点では10〜14歳が多かった。保健所管内別では、基幹定点では伊勢、伊賀で多く、小児科定点では尾鷲で多かった。

(11) 性感染症
 男性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数5.8人(前年比0.90倍)で最も多く、淋菌感染症が同4.9人(前年比1.24倍)と続いた。淋菌感染症は2003年以降、漸減傾向を示している。年齢階級別では性器クラミジア感染症が20〜24歳、淋菌感染症が25〜29歳が最も多く、保健所管内別では両疾患とも桑名で多かった。一方、尖圭コンジローマは定点当たり年間患者届出数1.7人(前年比1.04倍)で、2003年以降、漸増傾向を示している。年齢階級別では35〜39歳が多く、保健所管内別では津、四日市市で多かった。
 女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数7.1人(前年比0.72倍)で最も多く、性器ヘルペスウイルス感染症が同2.5人(前年比1.06倍)と続いた。性器クラミジア感染症は、前年はわずかに増加したが、本年は減少した。年齢階級別では20〜24歳、25〜29歳の順に多く、保健所管内別では鈴鹿での増加が目立った。他3疾患はいずれも年齢階級、保健所管内別とも目立った変化はみられなかった。

(12) 薬剤耐性菌感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は定点当たり年間患者届出数47.8人(前年比1.06倍)で、保健所管内別では津、松阪、鈴鹿の順に多く、年齢階級別では70歳以上が69.8%を占め、年齢が高くなるにつれて増加する傾向がみられた。ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は同0.7人(前年比0.46倍)で、津、鈴鹿、伊賀管内での散発がみられた。薬剤耐性緑膿菌感染症は同0.3人(前年比1.52倍)で、四日市市、鈴鹿、熊野管内での各1例の発生であった。