2013年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

 2013年第1週〜第52週(2012年12月31日〜2013年12月29日)における全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者数は、2類感染症の結核が320人、3類感染症の細菌性赤痢が2人、腸管出血性大腸菌感染症が62人(O157:50人、O121:7人、O26:2人、O156:2人、O119:1人)、腸チフス、パラチフスが各1人、4類感染症のE型肝炎が5人、オウム病が1人、つつが虫病が3人、日本紅斑熱が51人、日本脳炎が1人、レジオネラ症が19人、5類感染症のアメーバ赤痢が7人、ウイルス性肝炎(B型)が3人、急性脳炎が2人、クロイツフェルト・ヤコブ病が2人、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が2人、後天性免疫不全症候群が18人(AIDS患者8人、感染者10人)、侵襲性インフルエンザ菌感染症が2人、侵襲性髄膜炎菌感染症が1人、侵襲性肺炎球菌感染症が7人、先天性風しん症候群が2人、梅毒が14人、破傷風が3人、風しんが99人、麻しんが5人であった。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(72機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は51,595人で、2012年(57,069人)に比べ10%減少した。疾患別にみると、感染性胃腸炎(定点当たり年間患者届出数358.6人)、インフルエンザ(同243.7人)、手足口病(同138.2人)、水痘(同51.3人)の順に多く、2012年に比べ増加が目立ったのは、手足口病であった。
 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性146人、女性156人で、2012年(男性152人、女性126人)に比べ男性が4%減少、女性が24%増加した。疾患別にみると、男女とも性器クラミジア感染症(定点当たり年間患者届出数男:4.3人、女:6.2人)が多かった。また、基幹定点からの患者届出数は596人で、このうち94.6%をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(定点当たり年間患者届出数62.7人)が占めた。

2013年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1) インフルエンザ
 定点当たり年間患者届出数は243.7人で、前年比0.82倍に減少した。
 2012/13シーズンのピークは、2013年第5週(定点・週当たり患者届出数28.5人)で、国が定める警報開始基準(30人/定点)に達しなかったが、主因ウイルスがAH3亜型からB型へと入れ替わる混合流行のため、3月に入っても高い水準で推移し、第14週に警報解除基準(10人/定点)以下となった。
 2013/14シーズンは、2013年第52週に定点・週当たり患者届出数が1人を超え、年明け以降、急速に増加し、第5週(同36.0人)に警報開始基準を超えると、5週以上にわたり同程度の高い水準が続き、昨年の流行規模を上回った。病原体検出情報によると、AH1pdm09、AH3亜型、B型が混在する様相を呈している。

(2) 咽頭結膜熱
 定点当たり年間患者届出数は20.5人で、前年比1.00倍と同水準であった。流行のピークは第23週の定点・週当たり患者届出数1.1人と前年のピーク値(第28週:同0.9人)に比べ高かった。年齢別では1歳を中心に4歳までの幼児に多く、保健所管内別では桑名、四日市市、鈴鹿が多かった。

(3) A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 定点当たり年間患者届出数は43.8人で、前年比0.63倍に減少した。年初からやや低い水準で推移し、流行のピークは第17週の定点・週当たり患者届出数1.9人と前年のピーク値(第20週:同3.0人)に比べ低く、特に3月〜7月にかけての報告数が減少した。年齢別では4〜6歳が多く、保健所管内別では鈴鹿が多かった。

(4)感染性胃腸炎
 定点当たり年間患者届出数は358.6人で、前年比0.85倍に減少した。近年、流行規模の大きいシーズンが一年おきにみられるが、2013/14シーズンは、流行の開始時期が前年より遅く、ピークは第51週の定点・週当たり患者届出数16.6人と前シーズン(第50週:同26.7人)に比べ低くなった。年齢別では1歳が最も多く、2〜4歳がそれに続いた。保健所管内別では尾鷲、鈴鹿がやや多かった。

(5) 水 痘
 定点当たり年間患者届出数は51.3人で前年比0.81倍に減少した。年初からやや低い水準で推移し、11月以降増加し例年と同水準になったが、現行の調査開始の1999年以降では最小規模となった。流行のピークは第49週の定点・週当たり患者届出数2.6人であった。年齢別では4歳を中心に1〜5歳の幼児に多かった。保健所管内別では桑名、鈴鹿、伊勢、伊賀で多かった。

(6) 手足口病
 定点当たり年間患者届出数は138.2人で前年比11.18倍に大きく増加した。流行のピークは第30週の定点・週当たり患者届出数12.6人で、1999年以降最高となった2011年のピーク値(第28週:同12.7人)と同程度となった。例年、秋季には減少傾向を示すが、桑名、鈴鹿、伊賀保健所管内では、二峰性の流行様相を呈し、9月中旬まで県全体で同5人を超え、1999年以降最大の流行規模となった。年齢別では1歳を中心に1〜4歳の幼児に多かった。保健所管内別では伊勢で多かった。

(7) 伝染性紅斑
 定点当たり年間患者届出数は1.6人で、前年比0.46倍に減少した。2010年〜2011年の2年にわたる大きな流行があったが、2012年は大幅に減少し、2013年はさらに減少した。年齢別では3歳を中心に1〜5歳の幼児に多かった。保健所管内別では鈴鹿でやや多かった。

(8) ヘルパンギーナ
 定点当たり年間患者届出数は39.8人で、前年比0.74倍に減少した。流行のピークは第32週の定点・週当たり患者届出数5.7人で、例年より遅かった。年齢別では1〜2歳が多く、保健所管内別では鈴鹿、尾鷲、桑名で多かった。

(9) 流行性耳下腺炎
 定点当たり年間患者届出数は10.6人で、前年比0.30倍に減少した。年齢別では5歳を中心に4〜7歳が多く、保健所管内別では松阪が多かった。なお、本疾患は4〜5年周期で大きな流行がみられるが、桑名、四日市市保健所管内では、2007年以降の水準が他地域に比べ低く、今後の動向が注目される。

(10) RSウイルス感染症
 定点当たり年間患者届出数は34.4人で、前年比1.36倍に増加した。流行のピークは第49週(同2.7人)と過去10年間の同時期では最も高い水準となった。年齢別では1歳が多く、保健所管内別では桑名、四日市市、鈴鹿で前年より増加し、とくに鈴鹿で多かった。

(11) マイコプラズマ肺炎
 基幹定点当たり年間患者届出数は13.0人で前年比0.61倍に減少した。小児科定点当たり年間患者報告数は15.2人で前年比0.39倍に減少した。基幹定点では1〜4歳が多く、小児科定点でも4歳が多かった。保健所管内別では、基幹定点では伊勢、伊賀で多く、小児科定点では四日市市で多かった。

(12) 性感染症
 男性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数4.3人(前年比0.85倍)で最も多く、淋菌感染症が同2.6人(前年比0.77倍)と続いた。年齢階級別では性器クラミジア感染症は20〜24歳、25歳〜29歳、30歳〜34歳が多く、淋菌感染症は30〜34歳、35〜39歳が多かった。保健所管内別では両疾患とも桑名で多かった。
 女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数6.2人(前年比1.22倍)で最も多く、性器ヘルペスウイルス感染症が同1.6人(前年比0.88倍)と続いた。性器クラミジア感染症は、年齢階級別では20〜24歳、25〜29歳の順に多く、保健所管内別では鈴鹿で多かった。

(13) 薬剤耐性菌感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は定点当たり年間患者届出数62.7人(前年比1.07倍)で、保健所管内別では松阪で多く、年齢階級別では70歳以上が70.9%を占め、年齢が高くなるにつれて増加する傾向がみられた。ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は定点当たり年間患者届出数0.9人(前年比0.50倍)で、保健所管内別では津、伊勢、伊賀から報告があった。薬剤耐性緑膿菌感染症は同2.7人(前年比1.60倍)で、保健所管内別では尾鷲で多かった。薬剤耐性アシネトバクター感染症は2012年以降報告がなかった。