2014年三重県感染症発生動向調査情報


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1 全数把握対象感染症

 2014年第1週〜第52週(2013年12月30日〜2014年12月28日)における全ての医療機関から届出が必要な感染症の患者数は、2類感染症の結核が357人、3類感染症の細菌性赤痢が2人、腸管出血性大腸菌感染症が58人(O157:38人、O26:7人、O111:5人、O119:3人、O165:2人、O115、 O121、 O145各1人)、4類感染症のA型肝炎が5人、チクングニア熱が1人、つつが虫病が2人、デング熱が6人、日本紅斑熱が34人、レジオネラ症が17人、5類感染症のアメーバ赤痢が8人、ウイルス性肝炎が3人(B型)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が12人、急性脳炎が5人(インフルエンザB型:1人、ヘルペスウイルス:4人(このうち2人がHSV、VZVが1人))、クリプトスポリジウム症が2人、クロイツフェルト・ヤコブ病が2人、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が1人、後天性免疫不全症候群が10人(AIDS患者1人、感染者9人)、ジアルジア症が3人、侵襲性インフルエンザ菌感染症が2人、侵襲性肺炎球菌感染症が36人、水痘(入院例に限る。)が4人、梅毒が17人、破傷風が1人、風しんが8人、麻しんが1人であった。

2 定点把握対象感染症

 5類感染症(週届出対象)のインフルエンザ定点(72機関)、小児科定点(45機関)、眼科定点(12機関)及び基幹定点(9機関)からの患者届出数の合計は55,949人で、2013年(51,595人)に比べ約8%程度増加した。疾患別にみると、インフルエンザ(定点当たり年間患者届出数365.0人)、感染性胃腸炎(同339.1人)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(同61.5人)、ヘルパンギーナ(同50.5人)の順に多く、2013年に比べ増加が目立ったのは、インフルエンザ、咽頭結膜熱であった。
 5類感染症(月届出対象)のSTD定点からの患者届出数は男性144人、女性141人で、2013年(男性146人、女性156人)に比べ男性が約1%程度減少、女性が約10%程度減少した。疾患別にみると、男女とも性器クラミジア感染症(定点当たり年間患者届出数男:4.0人、女:5.9人)が多かった。また、基幹定点からの患者届出数は582人で、このうち94.3%をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(定点当たり年間患者届出数61.0人)が占めた。

2014年に特徴的な発生動向を示した主な感染症は以下のとおりである。

(1) インフルエンザ
 定点当たり年間患者届出数は365.0人で、前年比1.50倍に増加した。
 2013/14シーズンは、主因ウイルスがAH1pdm09、AH3亜型、B型と混在し、第5週(定点・週当たり患者届出数36.0人)に国立感染症研究所が定める警報開始基準(30人/定点)を超えると、5週にわたり同程度の高い水準が続き、3月に入っても高い水準で推移し、第14週に警報解除基準(10人/定点)以下となった。
 2014/15シーズンは、前シーズンより3週早い2014年第49週に、流行開始の目安とされる定点・週当たり患者届出数が1人を超えて急増し、2015年第4週(定点・週当たり患者届出数41.9人)にピークに達した。流行の主流はAH3亜型であった。

(2) 咽頭結膜熱
 定点当たり年間患者届出数は33.6人で、前年比1.64倍に増加した。
 年初から8月までは例年と同じ水準であったが、9月〜12月は報告数が増加し、例年より高い水準となった。
 年齢別では1〜4歳が多く、保健所管内別では桑名、鈴鹿、伊勢が多かった。

(3) A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 定点当たり年間患者届出数は61.5人で、前年比1.4倍に増加した。
 年初からやや低い水準で推移したが、特に5〜7月にかけての報告数が増加し、流行のピークは第21週の定点・週当たり患者届出数2.6人と前年のピーク値(第17週:同1.9人)に比べ高かった。
 年齢別では4〜6歳が多く、保健所管内別では鈴鹿が多かった。

(4)感染性胃腸炎
 定点当たり年間患者届出数は339.1人で、前年比0.95倍とほぼ同水準であった。
 2014/15シーズンのピークは、2014年第51週の定点・週当たり患者届出数13.7人と前シーズン(第51週:同16.6人)に比べ低かった。
 年齢別では1歳が最も多く、2〜5歳がそれに続いた。保健所管内別では尾鷲、鈴鹿がやや多かった。

(5) 水 痘
 定点当たり年間患者届出数は45.2人で前年比0.88倍に減少した。
 現行の調査開始の1999年以降では最小規模となった前年より、さらに減少した。
 年齢別では4歳を中心に1〜5歳が多かった。保健所管内別では鈴鹿、津が多かった。

(6) 手足口病
 定点当たり年間患者届出数は26.9人で前年比0.19倍と、1999年以降最大の流行規模となった2013年から大幅に減少した。
 年齢別では1歳を中心に1〜3歳が多かった。保健所管内別では津、伊勢、尾鷲が多かった。

(7) 伝染性紅斑
 定点当たり年間患者届出数は3.4人で、前年比2.14倍に増加した。
 年齢別では4歳を中心に3〜6歳が多かった。保健所管内別では桑名が多かった。

(8) ヘルパンギーナ
 定点当たり年間患者届出数は50.5人で、前年比1.27倍に増加した。
 流行のピークは第29週の定点・週当たり患者届出数6.6人で、前年のピーク値(第32週:同5.7人)に比べ高かった。
 年齢別では1〜3歳が多く、保健所管内別では伊勢、伊賀、尾鷲が前年より大きく増加した。

(9) 流行性耳下腺炎
 定点当たり年間患者届出数は9.1人で、前年比0.86倍に減少した。
 年齢別では4〜7歳が多く、保健所管内別では桑名、四日市市、鈴鹿が前年より増加し、前年報告が多かった松阪は減少した。

(10) RSウイルス感染症
 定点当たり年間患者届出数は38.0人で、前年比1.10倍に増加した。
 流行のピークは第50週(同4.3人)と、過去10年間の同時期で最も高い水準となった前年のピーク値(第49週:同2.7人)よりも高かった。
 年齢別では1歳が多く、保健所管内別では松阪、伊勢、尾鷲で前年より増加し、鈴鹿、津で多かった。

(11) マイコプラズマ肺炎
 基幹定点当たり年間患者届出数は7.2人で前年比0.56倍に減少した。
 小児科定点当たり年間患者報告数は12.0人で前年比0.79倍に減少した。
 保健所管内別では、基幹定点では伊勢、伊賀で多く、小児科定点では四日市市が多かった。

(12) 性感染症
 男性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数4.0人(前年比0.93倍)で最も多く、淋菌感染症が同2.6人(前年比1.02倍)と続いた。
 年齢階級別では性器クラミジア感染症は20〜24歳、25〜29歳が多く、淋菌感染症は25〜29歳を中心に、20〜39歳が多かった。
 保健所管内別では両疾患とも桑名が多かった。
 女性では性器クラミジア感染症が定点当たり年間患者届出数5.9人(前年比0.95倍)で最も多く、性器ヘルペスウイルス感染症が同1.3人(前年比0.81倍)と続いた。
 性器クラミジア感染症は、年齢階級別では20〜24歳、25〜29歳、15〜19歳の順に多く、保健所管内別では鈴鹿が多かった。

(13) 薬剤耐性菌感染症
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症は定点当たり年間患者届出数61.0人(前年比0.97倍)で、保健所管内別では尾鷲、松阪で多く、年齢階級別では70歳以上が73.6%を占め、年齢が高くなるにつれて増加する傾向がみられた。
 ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は定点当たり年間患者届出数0.9人(前年比1.00倍)で、保健所管内別では津、伊賀から報告があった。
 薬剤耐性緑膿菌感染症は同2.8人(前年比1.04倍)で、保健所管内別では尾鷲で多かった。